愛猫がしっぽをピンと立てて近づいてきたとき、毛布を前足でふみふみしているとき、ごろんとお腹を見せたとき――。猫は言葉を話さないかわりに、しっぽ・耳・目・体の姿勢、そしてすりすりやふみふみといった行動をフルに使って、今の気持ちをこまやかに表現しているといわれています。その「ボディランゲージ(しぐさ)」を一つひとつ読み解けるようになると、愛猫の心の声がぐっと近くに感じられるようになります。
とくにおもしろいのは、同じしぐさでも状況によって意味が変わること。しっぽを振る動きは、犬なら「うれしい」のサインですが、猫の場合はむしろ「イライラ」や「迷い」を示すことが多いと考えられています。こうした「猫ならではの読み方」を知らないと、せっかくのサインを見落としたり、逆に誤解してしまったりすることも。猫と人とのすれ違いは、案外こんなところから生まれているのかもしれません。
この記事では、しぐさをサッと引ける早見表からスタートし、しっぽ・耳・目・姿勢の部位別の読み方に加えて、検索でよく調べられるすりすり・ふみふみ・お腹見せ・イカ耳といった代表的なしぐさを一つずつ深掘りします。そして警戒・不安・不調のサイン(受診を考える目安)まで、まるごと事典のようにまとめました。鳴き声や噛む理由とあわせて読むと、愛猫の気持ちはさらに正確に分かるようになりますよ。さっそく、愛猫の「今のしぐさ」を読み解いていきましょう。
猫の気持ちを「鳴き声・しぐさ・行動」の全体像からつかみたい方は、まず猫の気持ちがわかる完全ガイドに目を通しておくと、この記事の内容がいっそう立体的に理解できます。
しぐさ×気持ち 早見表
まずはこちらの早見表で、愛猫のしぐさをざっくり当てはめてみてください。あくまで一般的な傾向であり、その子の個性やそのときの状況によって意味は変わります。気になるしぐさは、このあとの章でくわしく解説します。
| しぐさ・部位 | 主な気持ち・サイン | よくある場面 |
|---|---|---|
| しっぽをピンと立てる | 親しみ・うれしい・あいさつ | 飼い主に近づくとき、ごはん前 |
| しっぽを大きく左右に振る | イライラ・興奮・迷い(不快のことも) | しつこく構われたとき、悩んでいるとき |
| しっぽの先だけ小さく動かす | 軽い興味・考えごと・少しの不満 | 呼ばれたとき、リラックス中 |
| しっぽを膨らませる | 驚き・恐怖・強い警戒 | 大きな音、初対面の相手 |
| しっぽを足や体に巻きつける | 不安・緊張・防御・甘え | 知らない場所、座って様子をうかがうとき |
| 耳を前に向けてピン | リラックス・興味・ごきげん | くつろいでいるとき、遊びに集中 |
| 耳を横に伏せる(イカ耳) | 不安・警戒・いやがっている | 苦手な音、近づかれたくないとき |
| 耳を後ろにぺたんと倒す | 恐怖・強い緊張・威嚇前 | 強い不安、ケンカ寸前 |
| 瞳孔(黒目)が大きく開く | 興奮・恐怖・驚き | 遊びの興奮、こわいとき |
| 瞳孔が細くなる | リラックス・満足(明るさにもよる) | くつろいでいるとき |
| ゆっくりまばたきする | 信頼・安心・愛情(猫のキス) | 飼い主と目が合ったとき |
| 香箱座り(前足を畳む) | 安心・くつろぎ | 安全な場所でリラックス |
| お腹を見せて寝転ぶ | 信頼・安心(必ずしも「触って」ではない) | 飼い主の前で無防備にくつろぐとき |
| ふみふみ(前足で踏む) | 甘え・安心・幸福 | 毛布の上、飼い主のそば |
| すりすり(体や頭をこすりつける) | あいさつ・愛情・においづけ | 帰宅時、かまってほしいとき |
| 体を低くして縮こまる | 恐怖・強い緊張・防御 | こわいとき、逃げ場を探すとき |
「うちの子はどれだろう?」と当てはめながら、ぜひ続きを読んでみてください。猫のしぐさはひとつの部位だけでなく、しっぽ・耳・目・姿勢を組み合わせて読むと精度が上がるといわれています。
部位別|猫のしぐさの読み方
しっぽ|感情がいちばん表れる場所
しっぽは、猫の気持ちがもっとも分かりやすく表れる部位だといわれています。ピンと垂直に立てるのは親しみやうれしさのサイン。母猫に近づく子猫がしっぽを立てる行動に由来するとされ、飼い主にしっぽを立てて寄ってくるなら「あなたが好き」のあいさつと受け取ってよいでしょう。
一方、大きく左右にバサバサと振るのは、犬と違ってイライラや興奮、迷いのことが多いと考えられています。なでている最中にしっぽを激しく振り始めたら、「もう十分」のサインかもしれません。しっぽを膨らませるのは驚きや強い警戒、足に巻きつけるのは不安や緊張、防御の気持ちの表れとされます。先っぽだけをピクピク動かすときは、軽い興味や考えごとのサインといわれています。同じしっぽでも「立てる・振る・膨らませる・巻きつける・先だけ動かす」で意味がまったく違うので、まずはしっぽの動きを観察するのが読み解きの近道です。
耳|向きと角度が気分のバロメーター
猫の耳は左右別々に動かせるほど高性能で、気分や注意の向きをよく映します。前を向いてピンと立っているときはリラックスや興味、ごきげんなサイン。反対に、耳が横にパタッと開く「イカ耳」は、不安・警戒・「いやだな」という気持ちの表れと考えられています。さらに後ろにぺたんと倒れているときは、恐怖や強い緊張、威嚇の一歩手前。耳が伏せているほど、ネガティブな感情が強いと読むのが一般的です。音のする方向に片耳だけ動かしているなら、気になる物音を警戒している最中かもしれません。イカ耳については、後ほど「よく調べられるしぐさ」の章でさらにくわしく掘り下げます。
目|瞳孔とまばたきに本音が出る
目は「猫の感情の窓」ともいわれます。瞳孔(黒目)が大きく丸く開くのは、興奮や恐怖、驚きのサイン。遊びに夢中なときや、こわいものを見たときに見られます。瞳孔が細くなるのはリラックスや満足のことが多いですが、明るさによっても変わるため、状況とあわせて見ましょう。
そしてぜひ覚えておきたいのが、ゆっくりとしたまばたき。猫が目を合わせてゆっくり目を閉じたり開いたりするのは、「あなたに敵意はないよ」「安心しているよ」という信頼と愛情の合図とされ、「猫のキス」と呼ばれることもあります。こちらからゆっくりまばたきを返すと、猫もリラックスしやすいといわれていますので、ぜひ試してみてください。
姿勢・体勢|全身でリラックス度を伝える
体の姿勢は、その子がどれだけ安心しているかを物語ります。前足を体の下に畳んでうずくまる「香箱座り」は、すぐ動く必要がない安全な場所でのくつろぎのサイン。逆に、体を低くして縮こまり、いつでも逃げられる構えをとっているときは、恐怖や強い緊張を感じていると考えられます。背中を丸めて毛を逆立てるのは、自分を大きく見せて威嚇・防御している姿勢です。
よく調べられるしぐさを深掘り|すりすり・ふみふみ・お腹見せ・イカ耳
ここからは、検索でとくに多く調べられる代表的なしぐさを、ひとつずつ掘り下げます。「うちの子もよくやる!」というものから読んでみてください。
すりすり|あいさつ・においづけ・甘えのサイン
頭や体、ときには口の横を飼い主や家具にこすりつける「すりすり」。猫の頬や額には「臭腺(しゅうせん)」と呼ばれるにおいを出す部分があり、そこをこすりつけて自分のにおいをつける「マーキング(においづけ)」の意味があるとされています。「ここは自分の場所」「あなたは自分の仲間」という安心の確認であり、同時にあいさつや愛情表現でもあると考えられています。
帰宅したときに足元へすり寄ってくるのは、再会のよろこびや「かまってほしい」のサインといえるでしょう。一方、ごはんの前に激しくすりすりしてくる場合は「早くちょうだい」の催促のことも。すりすりの強さや場面を観察すると、甘えなのか要求なのかが見えてきます。
ふみふみ|子猫気分の甘え・安心の名残
毛布やクッション、飼い主のお腹などを前足で交互にむにむに押す「ふみふみ」。これは子猫が母猫のお乳を飲むときに、おっぱいの出をよくするために前足で押す動きに由来するといわれています。そのため、ふみふみは甘え・安心・幸福を感じているサインとされ、リラックスしきっているときに見られることが多い行動です。
柔らかい毛布などを前にすると子猫気分がよみがえってふみふみが始まる子もいれば、まったくしない子もいます。やる・やらないには個体差が大きく、しないからといって甘えていないわけではありません。なお、ふみふみしながら布を吸う「ウールサッキング」が頻繁な場合は、誤飲につながらないよう布の管理に気を配ると安心です。
お腹見せ(へそ天)|信頼のサイン、でも「触って」とは限らない
ごろんと寝転んでお腹を上に向ける、いわゆる「へそ天」。お腹は猫の急所であり、それを無防備にさらすのは強い安心と信頼の表れとされます。あなたの前でへそ天をしてくれるなら、「ここは安全」「あなたは信頼できる」と感じてくれている証拠といえるでしょう。
ただし注意したいのが、お腹見せ=「触って」のお誘いとは限らないこと。うれしくなってお腹をなでた途端、驚いて猫キック(後ろ足での蹴り)や甘噛みが返ってくることもよくあります。これは怒っているというより、急所への接触に反射的に反応しているだけのことが多いもの。見せてくれた信頼を静かに受け取り、なでるなら頭やあごの下など、その子が好む場所にとどめるのがおすすめです。
イカ耳|不安・警戒の代表サイン
耳を左右に平たく開いて伏せる「イカ耳」は、その見た目からそう呼ばれます。これは不安・警戒・「いやだな」という気持ちの代表的なサインと考えられています。掃除機などの苦手な音、来客、しつこく構われたときなどに見られやすい表情です。
イカ耳が出ているときは、無理に近づいたり抱き上げたりせず、まずは原因から距離をとって落ち着ける環境を整えてあげましょう。イカ耳のまましっぽを膨らませたり、体を低くしたりしているなら、不快や恐怖の度合いがかなり強まっているサイン。こうした状態が頻繁に続く場合は、生活環境にストレス要因がないかを見直すきっかけにしてください。日常的な不安サインの見抜き方は、猫のストレスサインの記事でくわしく解説しています。
愛情・信頼を伝えるしぐさ
猫が安心して心を許しているときに見せる、うれしいしぐさを集めました。これらを見せてくれたら、あなたが「安心できる相手」だと認められている証拠といえるでしょう。
- ゆっくりまばたき……目を合わせてゆっくり目を閉じるのは「敵意はないよ」「安心しているよ」という信頼の合図。「猫のキス」とも呼ばれます。こちらからゆっくり返すのもおすすめです。
- しっぽを立てて近づく……親しみとうれしさのあいさつ。「あなたが好き」のサインです。
- 香箱座りでくつろぐ……前足を畳んですぐ動けない姿勢は、「ここは安全」と感じている安心の表れ。
- そばで毛づくろい・寄り添って寝る……飼い主の近くで無防備に過ごすこと自体が、信頼の証といわれています。
すりすり・ふみふみ・お腹見せといった代表的な愛情サインは、前章でくわしく解説したとおりです。こうした愛情表現は鳴き声にも表れます。声でのサインとあわせて読み解きたい方は、猫の鳴き声の意味を解説した記事もぜひあわせてご覧ください。しぐさと鳴き声をセットで見ると、気持ちの読み取り精度がぐっと上がるといわれています。
「噛む」しぐさはどう読む?
しぐさの中でも飼い主を悩ませやすいのが「噛む」行動です。甘噛みなのか、本気で嫌がっているのか、遊びの延長なのか――背景はさまざま。たとえば前述のお腹見せの最中の甘噛みは「これ以上はやめて」の合図のことが多く、遊びに興奮しすぎての噛みつきは「狩り本能のスイッチが入った状態」と読めます。
噛む理由とその場面ごとの対処、子猫の甘噛みのしつけについては、猫が噛む理由・カーミングシグナルの記事でくわしくまとめています。あわせて、日常のしつけ全般は猫のしつけ基本ガイドも参考にしてください。
警戒・不安・不調のしぐさ|受診を考える目安
しぐさは愛情だけでなく、警戒や不安、体調の変化を教えてくれることもあります。イカ耳・しっぽを膨らませる・体を縮める・瞳孔が大きく開くといったサインが続くときは、その子がなにかにストレスや恐怖を感じている可能性があります。まずは原因(来客、大きな音、環境の変化など)から遠ざけ、安心できる隠れ場所を用意してあげましょう。
また、しぐさだけで病気を断定することはできませんが、「いつもと違う様子」は体調変化に気づくきっかけになります。次のような変化が見られたら、早めにかかりつけの獣医師に相談する目安としてください。
- 背中を丸めてじっとうずくまる・動きたがらない……痛みや体調不良を抱えているとき、猫は静かに丸まって隠れることがあるといわれています。いつもより明らかに動かない場合は注意が必要です。
- 急に隠れて出てこない・触られるのを強くいやがる……特定の場所を触ると逃げる・怒る場合は、その部位に痛みや不快感があることも。
- 毛づくろいが極端に増えた/減った……同じ場所をなめ続ける、逆に毛づくろいをしなくなった、といった変化はストレスや不調のサインのことがあります。
- 食欲・トイレ・元気の変化を伴う……しぐさの変化に加えて、食べない・トイレの回数や様子が変わった・元気がない、などが重なるとき。
これらは「必ず病気」という意味ではありませんが、放置せず様子を見ることが大切です。猫はもともと体調不良を隠す動物といわれるため、小さな変化に早く気づいてあげたいですね。気になる変化が続くときは、自己判断せず動物病院を受診しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 猫がすりすりしてくるのはどういう意味ですか?
A. 頬や額の臭腺で自分のにおいをつける「においづけ(マーキング)」が基本で、「自分の場所・仲間」という安心の確認とされます。同時にあいさつや愛情表現でもあり、ごはん前なら「早くちょうだい」の催促のこともあります。場面によって甘えか要求かが変わります。
Q. ふみふみは何のサインですか?やらない子もいますか?
A. 子猫が母乳を飲むときの動きの名残とされ、甘えや安心、幸福を感じているサインと考えられています。リラックスしているときに見られます。やる・やらないには個体差が大きく、しないからといって甘えていないわけではありません。
Q. 猫がしっぽを振っているのは、うれしいからですか?
A. 犬と違い、猫がしっぽを大きく左右に振るのはイライラや興奮、迷いのことが多いと考えられています。なでている最中に振り始めたら「もう十分」のサインかもしれません。一方、しっぽをピンと立てて近づくのは親しみのサインとされ、同じしっぽでも動きによって意味が大きく異なります。
Q. お腹を見せるのは「触って」という合図ですか?
A. お腹を見せるのは強い安心と信頼の表れとされますが、必ずしも「触ってほしい」という意味ではありません。お腹は急所のため、急に触ると驚いて噛んだり蹴ったりすることもあります。見せてくれた信頼を静かに受け取るくらいがおすすめです。
Q. 「イカ耳」になっているときは、どうすればいいですか?
A. 耳を横に伏せる「イカ耳」は、不安や警戒、いやがっているサインと考えられています。無理に構わず、まずは原因(音・来客・環境の変化など)から距離をとり、落ち着ける場所を用意してあげましょう。イカ耳が頻繁に続く場合は、生活環境にストレス要因がないか見直すきっかけにしてください。
Q. しぐさで猫の病気は分かりますか?
A. しぐさだけで病気を断定することはできません。ただし「急にうずくまって動かない」「触られるのを強くいやがる」「毛づくろいの様子が変わった」など、いつもと違う様子は体調変化に気づくきっかけになります。食欲やトイレの変化を伴うときは、早めに動物病院を受診しましょう。
まとめ|猫のしぐさは「組み合わせ」で気持ちが読める
猫のしぐさは、しっぽ・耳・目・姿勢のそれぞれに気持ちが表れ、さらにすりすり・ふみふみ・お腹見せ・イカ耳といった行動を加えて組み合わせて読むことで、「今うれしいのか、警戒しているのか」がぐっと分かりやすくなります。大切なのは、ひとつのしぐさだけで決めつけず、全身の様子や鳴き声、食欲・トイレなどとセットで読み解くこと。とくに「いつもと違うしぐさ」は、愛猫の小さなSOSに早く気づくチャンスです。
しぐさと声を合わせて読みたい方は猫の鳴き声の意味を解説した記事、噛む行動が気になる方は猫が噛む理由・カーミングシグナルの記事、不安サインの見抜き方は猫のストレスサインの記事もあわせてどうぞ。鳴き声・しぐさ・行動の全体像は猫の気持ちがわかる完全ガイドにまとめています。ボディランゲージが読めるようになると、毎日のなにげない瞬間が、もっと愛おしく感じられるようになりますよ。
なお、あなたと愛猫の「タイプ別の付き合い方」がわかる無料の性格・愛し方診断も用意しています。診断結果をもとにした全12タイプ別の詳しい解説は、LINEで配信予定(準備中)です。公開をお楽しみに。
参考にした主な情報源
- 公益社団法人 日本獣医師会(飼い主向けの猫の行動に関する情報)
- 各動物病院による猫の行動学・ボディランゲージに関する一般向け解説
著者:ペット愛し方診断ナビ編集部/最終更新:2026年6月29日
本記事は情報提供を目的としたものです。健康・行動の不安は獣医師にご相談ください。一部にプロモーション(広告)を含みます。

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